5/24/2008

Formal Logic 2

吉田のBLOGは堅いぞ、とのご指摘を頂戴することが多い。普段ボケて
いるので、僕を見知らぬ読者の皆さんに多少でもカッコつけてみたい
、という田舎者の願望がモロに出ているのかもしれない。そういう反
省を含めて今回は柔らかい話にしよう。ついでに文体も変えてみよう
かいな。
最近、形式論理学のあまりの厳格さに慄き、悔し紛れに身近な命題で
遊ぶ事を覚えたのは、前回のBLOGで書いた通りです。それ、
ロンドンの地下鉄の正常稼働率は高い
ロンドンの地下鉄の正常稼働率は高くない
これはロンドン近辺に住む人や、旅行時に苦労したであれば、色即是
空の日本人とて、積極的に排中律の原則に従い、後者が真であり、前
者が偽であり、その中間は存在しないことに、ウンウン、とうなずい
てくれると思います。
そこで、地下鉄で尿意をもよおしたらどうするかという問題が発生し
ます。地下鉄に乗り込む前であれば、自宅で済ますなり、去る際にパ
ブで済ますなり、大きな問題とはなりません。しかし、乗りこんだ後
の地下鉄が、その後、正常に運転しなくなることがあります。信号系
統の故障が良い例ですが、これはいつ起こってもおかしくないのが現
状です。
信号系統故障の特徴として、のろのろ運転ではあるが、前に進むケー
スが多い。これに対する解決法は、ためらわず次の駅で降りることで
しょう。この際、地下鉄運賃の高額なことは涙をのんで忘れるしかあ
りません。降りなかったために大きな後悔をするよりは、降りたほう
がよろしい。しかし、もう一つ命題があります。それ、
ロンドンには公衆トイレが十分ある
ロンドンには公衆トイレが十分ない
こちらも、後者が真であることに異をはさむ方は、まずいないと思い
ます。しかし、焦ることはありません。以下は女性にも適用可能な解
決法です。
駅を出たら、まず近辺にパブが見えるでしょう。トイレはまず地下か
1st Floor にありますので、直行します。パブによっては、公の場で
あるという良識の希薄な、セコいパブもあり、 'Customer only' な
どと店員に言われることもあるでしょう。この際も、こやつのセコさに
議論を吹っかけたりする時間は惜しみ、とりあえずカウンターで見せ
金しつつビールをオーダーし、断ってからトイレに急ぎましょう。そ
の後、きちんと金を払い、勝利のビールを飲んでから再び地下鉄にの
るかどうかは、個人の良識次第。パブ以外には、マクドナルドなどの
ファーストフード・レストランも、強力な助っ人となります。
しかし、これで解決できないこともあります。それは、乗り込んだ地
下鉄が、途中でウンともスンとも前に進まず、それが駅と駅の間であ
り、ひたすら待つしかない状態である時に、じわじわと、もしくは意
外な程、急激に尿意が高まる状態です。これは悲惨であります。解決
法は、ただ一つだけあり、死んだ気になって我慢する事でございます
。尿意にも2種類あり、所謂、大の場合と小の場合でございます。前
者の方が我慢が利きにくい、という特徴を持っていますが、前者は、
更に2種類に詳細分類されます。所謂、固いほうと、柔らかい・・・
僕はここにおいて、襟を正し、人の名誉と尊厳について考えざるを得
ず、おのずと文体も堅くならざるを得ない。前者の場合であり、かつ
詳細分類が後者である状況と、地下鉄がウンともすんとも動かないと
いう、極度の不運かつ絶望的な状況に置かれ、死ぬ気になっても、ど
うしても解決せしめることが出来なかった悲惨さを思ふてみよ。詳細
な予想描写は差し控えるが、当事者、周りの乗客。地下鉄はウンとも
すんとも動かない。赤子は激しく泣く。真夏のセントラル・ラインの
車内は40度近い。日本ではまずありえない事故だが、ロンドンであ
りえないとは言えない。幸い僕はこれまでにそうした惨状を目撃した
ことは無い。ちょっと危険な状況になったことはあったが、自分が最
終的当事者になったことも無い。しかし、過去にそうした現場に出く
わしていたなら、その後の僕の人生は、もう少し哲学的なものになっ
ていたかもしれぬ。ウーン、柔らかいのは怖い。

5/19/2008

Formal Logic

お客様は神様である (AはBである)
お客様は神様ではない (AはBではない)
最近読んだ数学の本が面白かった。上の例は、基本を確か中学校で習
ったはずである。僕の場合は、パチンコやバイク等の余暇に、もう少
々難しい背理法などを習い、その後すんなりと情報処理学に進んだ。
仕事人になってからは、さらにデジタル回路設計やソフトウェア開発
を通じて、いやがおうにも true か false しかとりえな世界で仕事
もした。
この2つの命題は、論理的に共に成立することができない。共に成立
しないこともできない。できない論理は議論の対象になりえず、その
場でポイされる。数学や西洋哲学の世界では、論理は絶対であり厳格
である。
日本人が、論理性を重んじる人達(欧米人が代表格)と一緒に仕事や
交渉を行う際、論理性に関するベースの違いが、しばしば問題となっ
て現れる。
いったい、何を言っているのか、よく分からないと言われる。Yes/No
がどうしてはっきり言えないのか。または、言ったあとで、どういう
論理で後で翻すのか。これを、聖徳太子の時代まで遡り、日本人の思
考ベースにあるものを懇々と説明しても、徒労に近い作業となるであ
ろう。なぜなら、我々は資本主義社会の中で仕事や交渉を行っている
のであり、それは厳格な論理性に基づいてのみ成り立つ社会だからで
ある。そのような社会で、色即是空などと言い出だしても、残念なが
らポイっと捨てられる。中学で習った数学を思い出し、論理的な説明
と行動に努めるしかオプションは無いだろう。
上の例は、矛盾律(the law of contradiction)という基本原則である
が、これに続くのが排中律(the low of excluded middles)という原
則である。
お客様は神様である
 または
お客様は神様ではない
以外にない、という原則である。即ち、「神様でもあり、同時に神様
でもない」とか、「お客様は神様と神様でないところの中間にある
」という曖昧さは、一瞬にしてポイっと捨てられるという、それはそ
れは峻厳な原則である。形式論理学とは、近代資本主義とは、ここま
で厳くせなあかんのかいな、とぼやきたくなる。まさに、是非も無し。
悔しまぎれに、身の回りで矛盾を感じていることを、形式論理学的に
吟味して遊んでいる。
同居人は権力者である。
同居人は権力者ではない。
家族や友人との社会、即ち契約の必要性が薄い社会では、排中律でポ
イっとするのは無理があろう、と思うのは日本人だけなのだろうか。

5/07/2008

Johnson Wins

ここ10年ほど、一つの腕時計を年中使っている。IWCの入門機だそ
うであり、そう高いものではなかったが、僕にはこの入門機が気に入っ
ている。いや、他に欲しいものを見つけられない、というのが2個目
をなかなか入手できない原因になっている。
骨細であり、手首も例外ではない。悔しいかな、直径の大きな腕時計
や、金属製のごついバンドは、全く似合わないことを認めざるを得な
い。これは腕時計コレクターになるには致命的な欠陥ではなかろうか。
直径が小さ目で、皮バンドのみ、という条件に合う腕時計となると、
女性用を除いては、選択肢があまり無い。同居人が、黒い文字盤だと
大きめでもなんとかなるという。しかし、更に汗かきである。どちら
かというと痩せ型なのだが、発汗はげしく、テニス仲間をしばしば驚
かす。汗と金属のコンビネーションはどうにも僕には耐えがたく、短
距離陸上選手が金のネックレスなどしているのが、不思議だと思って
しまう。結局、小さめ皮バンドに戻ってしまう。どなたか良いお勧め
がありましたら教えてくだされ。
時計を探しに行った訳ではないが、同居人に押されてビスター・ビレッ
ジというアウトレットに行かされた。バンクホリデーの最終日に、家
を11時に出たというのがそもそも間違いであった、というのが後で判
明した。近辺までは、M40モーターウェイもすいすいだったが、ラ
スト5マイルに1時間かかった。結局、所要時間2時間半。同居人は
母乳の影響か、腹が減ると、どうにもならぬらしい。ミニ同居人は、
飽きて泣き出す。やっと着いたが、レストランが満席で、長いキュー
が出来ている。この二人には地獄のキューであろう。機転を利かせて
入ったつもりの、アウトレットの外にあるレストランで、今度はオー
ダーからたっぷり1時間待たされた。結局、家を出てからショッピン
グらしきものを開始するまで5時間が経過していた。ショッピングに
2時間。帰りはわりと順調で1.5時間。ガソリン代が数十ポンド。
僕にはどう考えても、さっぱりわからぬ。家に戻って、腕時計を見て、
結局9時間がかりのショッピングだったなあ、と言うと、そんな時間
なんて気にしないのっ、と言う。わからぬが、やらねばならぬ事なの
であろう。是非も無し。
連休明けの翌朝、いつものように East Putney で地下鉄に乗った。
信号系の故障で遅れが出ている、と通知版に書いているが、割とあっ
さりと電車が来たので乗り込んだ。4つ先の駅に到達するまで40分
かかった。そして、その駅でさらに停車状態が10分程経過した。ロ
ンドンに住む方は皆うなずいて頂けると思うが、こういうときの英国
人は、実に忍耐強く、乗客一人一人が立派な殿様に見えてくる。小者
の僕は耐え切れなくなって電車を降り、次の乗換駅である Earls 
Court へ徒歩で移動した。他の地下鉄線を選んだものの、時計を見る
と既に9時前のラッシュアワーだ。来る電車全て満席で降りる人も少
なく、なかなか乗れない。3台目になんとか乗り込むが、次の乗換駅
でも同じことを繰り返さねばならなかった。
ようやくの思いでオフィスについて腕時計を見ると、家からの所要時
間2時間弱。ロンドン恐るべし。先週、みごと当選した新ロンドン市
知事のジョンソンさんに申したし、時は金なり。週明け朝の地下鉄の
遅れは、その一週間の士気をおとしめ、市の経済的損失たるや莫大な
ものでござる。なにとぞ地下鉄の信号システムを根本的に見直し、改
良して下され。