4/27/2008

Marathon

巷では聖火リレー茶番劇が騒がしいが、知人が今年もロンドンマラソ
ンを完走した。ご存知の方も多いと思うが、ロンドンマラソンは大き
なチャリティー・イベントでもある。彼女は、これまで何度もこれに
挑戦し、完走し、さまざまな募金を行われている。その高尚な数時間
を死ぬ思いで駆け抜けられている頃、僕はある行事に参加し、ワイン
片手に、赤ら顔でぶらぶらとケント州の公園を散歩していた。なんた
る違い。
”えらい”、という日本語のニュアンスは、英語に翻訳しにくいと、
どこぞの本に書かれていたが、確かにそうかもしれない。彼女は正に、
えらい。これまでにも挑戦をやめようと思ったこともあるかもしれな
いし、いつかはストップせねばならない難行である。それを数度も続
けたというのは、文句なしにえらい。きっと、なにかしらの抗いので
きない使命感を覚える人なのではないだろうか。これはえらい。
えらい、の別のニュアンスに、偉くなった、課長になった、社長にな
った、というのがある。偉い人の接待は疲れる、などと使われる場合、
その地位が主な対象なのであり、個人の知力・人徳などは対象の外に
ある。偉くなった、なぜなったか、と考えたときに、なにかしらの抗
いのできないご指名があって、たまたま自分がその役割を一時的に演
じていると思えば、地位に固執することもなく、地位を利用した不正
を思いつくことも無く、指名されたとおりの仕事をきちんと進められ
るであろう。duty という単語は日本語になりにくいなあと感じてい
るが、まさに dutyを果す、ということである。僕は稲盛さんの本を
あまり読まぬが、このあたりは全く同感、えらいなあと思う。
普段あまり意識したことは無いが、社長業なんぞは、なんの得も無い
なあとは感じてきた。チャリティーとまでは言わぬが、たまたま当社
を創ってしばらく社長業を営むというのは、神か仏か知らぬが、何ら
かに与えられた自分の役割なのだろう、と思えば、昇給が少ないと訴
えてくる社員への対応や、首を申し渡す時の辛い沙汰も、いたって冷
静に対処が・・・できていないのが情けない。やはり僕はワイン片手
にぶらぶらしながら、これは辛かっただの、これはすごかっただの、
一喜一憂の俗な毎日を、これからもマラソンする事になるのであろう。
是非も無し。

4/12/2008

6 x 200 = 1,200

おてんと様は下界の人間の期待とは独立して活動しており、夏時間と
なろうが、折角のイースター4連休であろうが、雨を降らしたければ
そうするし、4月になろうとも容赦なく雪を降らす。今年は特に文句
のひとつも言いたくなるような天気が続いているが是非も無し。UKで
最もよい気候と言われる5,6月が昨年のような悲惨なことにならな
ければ良いと思うが。
政治の世界も人間の期待とは独立して活動しているのではないかと、
再認識せざるを得ないことが世界のあちこちで散発する。近頃やり切
れない気持ちになるのは、瀕死の銀行に対する、官による救済である。
中小企業の経営者は、少なくとも従業員に給与を支払い続けるべく、
知恵を絞り、こつこつと小さな金を、懸命にやりくりして営業してい
る。税率が変われば更に工夫をかさね、legislationが変われば仕組
みを変え、情報漏洩と聞けばそれなりの対策する。そして経営が失敗
したら一巻の終わり。誰もが是非も無し、と思うだけで、危ないとき
には銀行も誰も傘を貸さない。現代の資本主義社会でのビジネスとは、
こうした厳さが必ず伴う。
当社の売上げは、昨年度、円でいうと約6億円だった。社員30名と
その家族が生活できる数字である。このまま営業を続ければ、200
年後には1,200億円となる。無論、僕が三途の川を渡ってから百
数十年を経過した頃であろう。こうした大金を3年の間に、利益では
なく、損失として作ってきた経営者というのは、逆の経営結果を出せ
うる人たちなのかもしれないが、今回の賭けは負けと出た。ビジネス
には多かれ少なかれリスクが伴うが、当時の都議会はリスクの方を選
択したのであり、まさに是非も無し。
そして、再生計画に全く説得性の無い破綻銀行に1、200億円の税
金の注入が、数度の会議を経て議決されたという。子供達の間でさえ、
広場や砂場で遊ぶとき、負けたビー玉は返ってこない。ズルをすると、
友たちにズルーイと言われる。ズルをしないまでも、200年分のビー
玉を損失しちゃうような遊び方を避ける知恵は、どの子供でも持って
いる。銀行というのは非常に特殊なビジネスのようで、これまでにも
国が救済するということが何度も行われてきた。その度に、中小企業
のオヤジたちは、ビー玉ってえのは、本当は返ってこないんだよなあ、
との溜息を抑えられない。
プロを集めて作った銀行である。当然、その品質はどうあれ、なんら
かのリスク回避のコントロールが、複数存在したはずであるが、なぜ
ワークしなかったのだろうか。さらに日本には、金融庁という、外部
の強力なモニター機能が存在するが、なぜこうなるまでワークしなかっ
たのだろう。 1,200億というのは、金融庁にとっては小さすぎる数字
だったのだろうか。僕の理解の範囲を超える、もっと生々しい原因が
積み重なったのだろうか。
この零細企業に不正が起きないように、事故が起きないように、当社
のサービス品質がなるべく個人に因らないようにと、社員が懸命に稼
いできてくれた、なけなしの金を使わせて貰って、コンサルタントを
雇い、基本術を教えて貰い、毎日コツコツと当店に合ったシステムを
考える。中小企業の経営者達はそのような努力を毎日続け、インパク
ト度でいえば、100万円程度の事故をいかに防ぐか工夫しているの
だ。1,200億注入、はあ~。